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「大倉、燈椰上がれ!!合格じゃ」
周りが一気にどよめく。
残り合格枠はキーパー含めてたった3人である。
ひょっとすればキーパー3人で終了の恐れもある。
全員が緊張と恐怖で一杯一杯に見えた。
ただ、そんな時も1人生き生きと動く選手がいた。
覚束無い足取りのチームメイト、そして相手選手を次々プレッシャーを掛けるように抜き去る。
最後尾から、一気に敵陣に進出する。
神出鬼没のリベロである。これこそが葵が気になっていた智である。
「うわー持っていくな~」
葵は、自分もピッチに立っていたくなった。
智は、ある程度掻き乱したところで右サイドにパスを送る。
しかし、あっさりトラップミスしタッチラインをボールが割ってしまう。
「そんな硬くなんなよ。落ちても受かっても楽しかったらまた次に進めるんだからよ。つまんないままだったらサッカーするの憂鬱になるぞ?」
ニッと笑えば、直ぐ様智は走り出す。
「やはり最後の合格者はアイツで決定じゃな」
丹波もやはり、智を気に入っていたのだった。
スローインからの反撃に智はDFラインを統率し、反撃を最小限で留める。
勿論守備も出来て纏めることも可能な万能プレーヤーである。
こんな選手を外す理由など見つからなかった。
しかし、もっと驚く点は、その後どちらのキーパーも無失点だということ。
どんなに守備が上手くてもピンチを招かないなんてことはない。
それを考えれば、歩と松村も合格に値すると言える。
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