好きでもないから

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 何度も言いますけど、と莉子は小声で付け足した。  松雪は自分の気に入ったニックネームで生徒を呼ぶのだが、莉子はそれを受け入れていない。  前からそう松雪に訴えかけているのだけれど、上手くかわされているのだ。  教師らしくない口調や態度が気に入らない莉子は、松雪を好いていない。  皆が松雪を好きな理由が、莉子にとっては嫌いな理由にしかならないのだ。  子どもが嫌いな莉子は、子どもっぽい松雪さえも苦手だ。  その文句をあからさまに表に出す珍しい莉子が面白いらしく、松雪はよく今のようにからかってくる。  莉子の意見に、松雪は「んー」と小さく唸ってから、何かを思い付いたように笑みを浮かべた。 「じゃ、莉子も"先生"って呼ぶのやめてよ。莉子ぐらいだろ、松雪先生なんて言うの」 「また莉子って……」
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