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松雪が菅原のことを"井草先生"と下の名前で呼ぶのは、同年同期で同姓だからだろうか。
現在は2人とも26歳で、数年前に教師になって初めて働くこととなった高校が、松雪と同じ佐南だったのだ。
分からないことなどを教え合ううちに自然と仲良くなったのだと、松雪は以前莉子に話していた。
「莉子、それ何?」
しばらくプリントと睨み合っていれば、後ろから聞き慣れた声がかかった。
振り向かずともわかるのだけれど、莉子は一応後ろを確認してから口を開く。
「あぁ、美術係のプリント」
「へぇ……菅原先生の字でしょ、これ。相変わらず必要最低限のことしか書いてないな」
「……だよね」
莉子と一緒にプリントを覗き込む彼女は、伊藤万由(いとう まゆ)という莉子の友人だ。
割と人見知りな莉子とは正反対の、活発で運動が好きな子で、女子バスケ部の次期キャプテンと予想されている。
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