蒼天の撃墜王

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冬夜は過ぎ去った日の幸せな日常を写した写真に、手を伸ばした。 「もう八年……か」 八年前。御剣 冬夜は、御剣の家を捨てた。 この写真は家を出る前に写した、御剣家の後継者としての最後の思い出。 冬夜は幼い頃から御剣の家を継ぐための教育を受けて育った。 教えられた事はすぐ身に付け、スポンジが水を吸収するように物事を吸収し、難なくこなす冬夜の姿を『天才』だと言って皆褒め称えた。 冬夜自身、御剣の家を継ぐ事になんの疑問も抱いていなかったが、全てを変える出会いがあった。 それは冬夜が十六歳の誕生日を迎えた時の事。当時御剣財閥が独自に開発を進めていた、可変型高機動戦闘機【黒翼】が屋敷の地下研究施設で最後のシステムチェックが行われていた。 その最終チェックに、後学の為という理由で同席していた冬夜は、自分の胸がかつてないほど高鳴っている事に気付いた。
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