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そして八年前。二十歳の頃。冬夜は訓練校時代からの自分の専用機【黒翼】と、人工AIルイスと共に御剣の家を捨てた。
弱き者の盾となるために。
家を捨てた冬夜は、その日のうちに国連軍に入隊し、今では大尉の地位まで登りつめていた。
『早いものですね。やはり、悠陽と冥夜が心配ですか?』
過去の追想に耽っていた冬夜は、ルイスの声で我に帰る。気が付けば煙草が既に灰になっていた。
「それはな。だが、あの娘達の側には真那がいる。過度な心配はしていないさ」
自分が家を出る時、二人の妹はまだ十歳だった。そんな幼い妹達に御剣の家を全ておしつけて出てきた自分に、心配する事が許されるのかは解らないが、戦場に出てからの八年間、どんなに辛く苦しい任務の最中でも、二人を忘れた事は一度も無い。
『なるほど。確かに彼女がついているなら、貴方が側にいるよりもずっと安心ですね』
「おいおい。そんな言い方は無いだろ」
『強く否定出来ないのは、冬夜にも自覚があるからでしょう?』
「……降参だ。もう勘弁してくれ」
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