蒼天の撃墜王

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黒翼に換装された新型のブースターは、ブースターの出力を最大限まで上げていた敵機と、出力を抑えたままで十分な活躍をみせた。結果だけみれば、画期的な代物だろう。しかし、看過出来ない問題点があった。 「逆を言えば、あれ以上ブースターの出力を上げていたら、満足に立ち回れなかっただろうな。いずれあのブースターが可変機の主力になると、開発部の連中は息巻いているが、全てのパイロットがあのブースターを使えるようになるのは難しいだろう」 『なるほど。操縦技術的な問題ですか。貴方ほどのパイロットがそこまで言うのなら、相当なじゃじゃ馬なのでしょうね』 「まあ、暫く使ってみない事には正しい評価は出来んがな」 話が終わる頃には、自室の前まで着いていた。 カードキーの認証許可を終え中に入ると、そこは相変わらずのいつも見慣れた、暗く殺風景な部屋だった。 ベッド一つに、書類が積まれた机と回転式の椅子が一組。部屋には窓が無いため、昼でも電気を点けなければならない。 冬夜は部屋の扉を閉めると電気も点けずに、基地の備品の割りに意外と座り心地の良い回転椅子へと腰を降ろした。 机に備え付けられているスタンド型のライトを点けると、シガーケースから煙草を一本取り出して、愛用のジッポーライターで火をつけた。 いがらっぽい煙りが肺中に広がり、メンソールの刺激が喉を刺す。 ゆっくりと肺に溜まった煙りを吐き出すと、紫煙がライトの明かりにゆらゆらと漂っていた。
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