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「ヒョン、見てください。」
「え?」
「あそこです。」
宿舎から少し距離を置いた所で立ち止まって玄関を指差すチャンミン。
「見えますか?」
玄関の前に踞って座っているジュンス。
「ジュンス…っ…」
「ヒョン、行ってきてください。僕は病院に戻ります。」
「あぁ、ありがとうな。」
「いえ。また何かあったら連絡して下さい。」
「おう。」
返事をすると、チャンミンは笑顔を見せて再び病院へと帰って行った。
チャンミンは一番下なのに、迷惑かけてばっかだな、オレ。
「ありがとう、チャンミン。」
小さくなっていく背中に向かって呟いた。
そして俺は、宿舎の玄関へと足を運ばせる。
空の色は、知らないうちにオレンジ色に変わっていた。
ジュンスの目の前に来たのに、ジュンスは気づかない。
「ジュンス。」
そう声をかけると、ビクッとして顔をあげた。
「なにしてんの?」
ジュンスの顔は、怯えている。
「どうして?」
「え?」
「どうして僕を見つけるの?」
次第に涙が溢れだし、ジュンスはまた顔を埋めた。
「どうしてって。……心配だからだよ。」
「ユチョン、僕ね、ヒョンたちやチャンミンのこと…
思い出したんだ。」
一部の記憶を取り戻せたというのに、ヒョン達のことを思い出せたというのに……
なぜ、ジュンスは泣く?
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