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声でかろうじて女性だと判ったが、体型の分かりにくい丈長のロングコート。目深に被った帽子からは、その表情は窺えない。
拓けた森の中央に佇む黒衣の女性はいつの間に現れたのだろう、と思った。
「……これはこれは、驚かせてしまったようだ」
そう言って目深に被った帽子を軽く上げる。――凍りつくような白銀の眼。同じく銀のような白髪、横で束ねた短い三つ編みが揺れた。こんな状況にも関わらず、思わず魅入ってしまうような妖艶な美しさ。
女性は微笑みを称えゆっくりとこちらに歩いてくる。今にも双剣を振らんとする男を素通りして、私に向かってきた。
この女性は危険だと、頭の警鐘が鳴り響いていた。
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