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男の走馬燈は、やっと高校を卒業した。
その後、男はこのビルにある会社に勤めることになり、もちろんその様子も鮮明に駆け巡っていた。
もはや地獄だと感じた。
男の体験した時間は十何年分のものだったのだ。
男は自殺を後悔しだした。何を好き好んで嫌な人生をやり直さなければならないのか、と思っていた。
そうして祈り続けながら走馬燈を見ていく男。
ついに走馬燈は、今日。つまり自殺当日までやってきた。
やっとだ・・
男は安堵のため息をついた。
しかし男が見た走馬燈は、そうは行かなかった。
ビルの屋上に男。
今にも飛び降りんとしている。
「やめて!」
その声に振り向く男。
会社の同僚のOLのカナだ。
生涯で唯一、男に優しくしてくれた天使のような女性だった。
しかし、今日給湯室で、彼女が男の悪口を言っていたのを聞いてしまった。
そして、男は絶望して、屋上に来たという訳だったのだ。
まさに生きる希望を無くした瞬間だった。
その彼女が、男に説得していた。
どうせ、心の中じゃ俺のこと・・・・と思い、手すりを放そうとする男。
しかし、彼女の言葉は、それとは正反対なものだった。
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