自殺する男

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どうやらカナは同僚の、男に対する悪口に腹を立て、男の悪口を否定して怒鳴っていたようだっだ。 それを男は勘違いして、自殺しようとしていたのだ。 そして更に信じがたいことに、カナは男の事が、好きだったことも打ち明けた。 男ももちろん彼女の事を好いており、自殺するつもりだった気合いを全て告白に注ぎ込んでしまった。 死ぬ気になればなんでもできるものである。 こうして二人は結ばれていったのである。 一方、ただいま空中を漂っている男は冷静にはいられていなかった。 なんなんだ!こんなの走馬燈じゃない! しかしそんな男の思いは露知らず、走馬燈は駆け巡る。 やがて男とカナの間に子供が出来た。 幸せの絶頂である。 子供の為に男は頑張った。 今まで馬鹿にしてた同僚にも認められ、出世した。 マイホームだって買ったのだった。 そして子供は三人になり、それぞれが大人になった。 男とカナは仲の良いまま老夫婦になった。 日向に二人微笑みあっていた。 もしやあの声を聞いていれば、こんな人生を歩んでいたのか!? 男は先程より後悔した。 手を伸ばした。 しかしもう遅い、地面はもうすぐだ。 「お父さん!」 子供たちの声を聞いて、老人になった男は目を閉じた。 温かい眠りにつくのだ。 一方、まだ若いこの男は、汚れたアスファルトに看取られようとしていた。
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