0人が本棚に入れています
本棚に追加
胸を張って堂々と風を切り歩く男。
周りの人に見られているのを快感に思っていた。
はっはっは、皆も早く元気になって上を向いて歩くがいいよ
なんて心の中で勝ち誇ったように呟いた。
そんな中。
「みてあれーゴホン!ケンコータイがいるよハハハ」
「だっさ!まだ夏気分なのかなーズルル・・」
見事に風邪をひいているであろう女子高生が、体を震わしてそう男に言った。
一体なんの事かよくわからないが、馬鹿にされているようだ。
そして反対側からも声が聞こえた。
「風邪が治りそうでさあ・・このままじゃあいつに馬鹿にされるよ・・ちょっと遊んでぶり返したいんだけど付き合ってよ」
「おいおい!今日俺四十度あんだぞ四十度!・・しょうがねえなあ・・ゲーホゴッホ!」
まるで自慢しているように体の悪さを披露している。
ますます訳がわからなくなる男。
工事現場を通り過ぎる。
「おい、新入り!俺が風邪ひいてるっていうのにゴーホッン!お前はピンピンしてるたあどういうこった!」
「すみません!昨日寝ちゃって良くなっちゃったんです!」
「歯をくい・・じゃない、口を開けろ!ゴッホゴーホッンゲホゲホ」
監督らしき人が新入りに向かって、咳を思いっきりかけている。
男は気が狂うように感じたが、すぐに周りの視線で目が覚め、こう言った。
「あのー恥ずかしながら頼みごとなんですが・・私にも風邪分けて貰えないでしょうか」
最初のコメントを投稿しよう!