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Aの友人に話のとても上手い男がいた。
その男が一度口をあければ、聞いたものは虜になり、その世界に入り込んでしまう・・と言った程の実力であった。
Aは今日も、そんな彼と話をしていた。
彼の話の虜となっていたのだ。
「でさあ、その時に出来た傷なんだけどさあ」
彼はいつもの軽いノリで今日あった出来事を、Aに話している。
話が上手いというのは、彼が実際にあった体験を、リアルかつ適切な表現、絶妙な強弱の付け方等々、臨場感溢れる話りをする所にあった。
そして、そんな話を聞いた人はこういう。
「待った!痛いから痛いから!実際にあってもいないのに指めっちゃいた!」
Aは人差し指を押さえながら、彼の話を遮った。
もう限界というAの抵抗を無視しながら、嬉々として話を続ける友人。
彼とAはこうしていつも遊んでいた。
痛々しい話ばかりではない。
かわいいタイプの女の子を見たという話もあれば、夜に怖い物音に遭遇した話。
どれもAの想像力をたくましくさせた。
もはやAの友人に起こった出来事は、Aに起こったも同然であった。
ある日、珍しく彼が落ち込んだ様子でAのもとに来た。
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