67人が本棚に入れています
本棚に追加
『…この部屋の新しい所有者か?
出してくれよ退屈なんだ、腹も減った
この研究所の元の所有者は俺の事なんて忘れちまったから、俺をここから出せるのはお前だけなんだ』
名も無いそれは自分の体を腋の辺りまで地面と同化させて頼んだ
その行動の真意は不明だが、この生き物なりの、ものを頼む時の礼儀だろう
「忘れられた…ねぇ…
でも残念ね、私はここの新しい所有者でも元所有者の知り合いでもないわ
気まぐれで来ただけよ
それに貴方は兎も角、他の失敗作も出て来るじゃない」
女性は扇子で口元を隠しながら言った
檻の中には怪物と例えられる様なものがいくつも転がっている
『いや、こいつ等はすでに死んでる
長い間閉じ込められて空腹に耐えられなくなった奴に喰われた奴、飢餓で死んだ奴
それくらいか…寿命を迎えた奴はいねぇ
俺は今まさにそうなろうとしているんだ…、頼むから出してくれ!』
名も無いそれは檻を掴み必死に頼んでいる事をアピールした
死が怖くない知的生命体などこの世に存在しない
この生物も例外ではない
「…そこまで出してほしいって言うなら出してあげない事もないわ」
呟くように言った
最初のコメントを投稿しよう!