失敗作の○○

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『…この部屋の新しい所有者か? 出してくれよ退屈なんだ、腹も減った この研究所の元の所有者は俺の事なんて忘れちまったから、俺をここから出せるのはお前だけなんだ』 名も無いそれは自分の体を腋の辺りまで地面と同化させて頼んだ その行動の真意は不明だが、この生き物なりの、ものを頼む時の礼儀だろう 「忘れられた…ねぇ… でも残念ね、私はここの新しい所有者でも元所有者の知り合いでもないわ 気まぐれで来ただけよ それに貴方は兎も角、他の失敗作も出て来るじゃない」 女性は扇子で口元を隠しながら言った 檻の中には怪物と例えられる様なものがいくつも転がっている 『いや、こいつ等はすでに死んでる 長い間閉じ込められて空腹に耐えられなくなった奴に喰われた奴、飢餓で死んだ奴 それくらいか…寿命を迎えた奴はいねぇ 俺は今まさにそうなろうとしているんだ…、頼むから出してくれ!』 名も無いそれは檻を掴み必死に頼んでいる事をアピールした 死が怖くない知的生命体などこの世に存在しない この生物も例外ではない 「…そこまで出してほしいって言うなら出してあげない事もないわ」 呟くように言った
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