～短編集～小さき涙たち

私の涙

1ねん1くみ、はらだゆうみ(原田裕弥)

将来は、ケーキ屋さんになりたいです。
あと、お母さんの手伝いもしたいです。

小学校の将来の文だ。
いきなり出てきてびっくりした。
なぜなら、今、私は社会人だからだ。

私はふと思った。

ケーキ屋になりたかったんだ…―

忘れてたな。

と、つい童心にかえってしまった。

掃除はあまり得意ではない裕弥は、なぜだかわからないが、掃除をする気が起きた。

裕弥は今、ケーキ屋ではなく、とある保険会社に務めている。

このころの｢ケーキ屋｣という夢からは、とてもかけはなれている。

…―お母さんの手伝いもしたいです。…―

｢…今さらこんなの出てきてどうするのよ。｣

誰もいない室内で、ボソッと皮肉めいた言葉を呟いた。