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僕の涙
ある晴れた朝に、白いベッドの上で「僕」は目覚めた。
暖かな光が差し込めている。
―…ここは…どこ?
僕は…誰?
そう思いながら、左右を見渡す。
「先生!純哉くんが起きました!」
騒々しくナースが言うと、廊下からバタバタと走る音が近づいてくる。
―…なんだ?
「やぁ、純哉くん。
どうだい?調子は。」
「…ね…え。…誰?それ?」
「…!!!
かわいそうに…相当のショックだったのだろう。
…記憶喪失か。」
「?
ねえ、僕は、[じゅんや]って言うの?」
「…ああ。」
ナースと先生は、悲しそうな顔をした。
「ねえ、どうしてそんなに悲しそうな顔をしてるの?」
先生「!」
先生は、静かに説明し始めた。
先生「…実は、純哉くん。
君は………」
純哉「…僕は?」
先生「…家庭内暴力にあっていた子なんだ。
そして、命が危ういところを、近所の方に通報されたんだ。」
ナース「先生!
いきなりそれは…」
純哉「ううん。いいの。
わからないけど、助けてくれたんだね。
ありがとう。」
嬉しかったのか、ニコニコしながら答えた。
先生「いいえ。」
無邪気な子供の笑顔でホッとしたのか、肩の力を抜いた。
純哉「僕は、涙の流し方がわからない。」
先生「辛いとか、苦しい、悲しいと思うときもそうだが…
心の底から泣きたくなったら自然に出てくるよ。」
純哉「…わからないや…。」
先生「ハハッ。
難しいこと言っちゃったかな?」
純哉「大丈夫です!僕、無理はしないですから!」
先生「よろしい。
今はおとなしく寝てなさい。」
純哉「はーい。」
安心したのか、横になったとたん純哉はすぐに眠ってしまった。
暖かな光は未だに病室を照らしていた。
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