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「高田さんだっけ?」
「う、うん。」
「隣の元田呼んでくんない?」
小宮くんと初めて話した。
話したって言うかな?
あたしは隣の席の男の子の机をトントン叩いて、小宮くんを指した。
小宮くんと元田くんの会話が始まって、あたしは彼の意識の中から外れる。
たったそれだけ。
消しゴム貸したとか、シャープペンの芯をもらったとか…
せめてそれくらいの記念品が残ればよかったのに…
何も残らない会話だった。
『入試の教室一緒だったよね』
とか、そんな期待したあたしが虚しいくらいに、彼の中に存在がなかった…
「ねーカッコイイ人いた?」
卒業して久しぶりに同中の友達と駅で会って、やっぱり女の子はそんな会話が好きで、あたしもその質問に答える番が回ってきた。
ちっちゃく首を縦に揺らすと、みんなは目を輝かせて羨ましがる。
「え? でもたぶん普通だよ。」
そりゃカッコイイと思うけど、みんなのカッコイイと違うかもしれないし、とりあえず話題への興味を逸らそうとする。
「なに言ってんの? それって結構気になってるってことじゃない?」
それはあたしもなんとなくわかっていたような、いないような。
『恋』
だった。
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