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いつも僕が君のこと見てるて、君は知らないんやろなあ。
天気のいい日必ず、君は隊舎の屋根の上に登って空を眺めてるんや。
そんときの君はどこか切なげで悲しげで…、せやからぼくまで気分が曇ってくんねん。
まあ、ぼくが見てることは内緒やで。
それから、九番隊に書類を届けにいくと絶対檜佐木副隊長に絡まれとったなあ。
ぼくとしては気に入らんねん、君が満更でもない顔するから余計いらいらしてまう。
今度イヅルによく注意しとかなあかんなあ、君を隊舎から出さんように。
これも、ぼくが見てることは内緒やで。
こないだの雨の日、君はずぶ濡れの子猫拾うとったなあ。高いとこから降りられんようになった猫助けるために、自分までびしょびしょになっとってん。
ほんまお人好しやなあ、君は。
もちろん、ぼくが見てることは内緒やで。
今日は忙しいから仕事してくださいってイヅルの目が痛いから、仕方なしに書類に判押してんねんけど。
君が気になるから顔上げると、君は書類片すのに一生懸命や。ぼくが見てることも気付いてないんやろなあ、こっちなんか向いてもくれへんもん。
はあー、
またイヅルに集中してくださいなんて言われて…君も忙しそうやし、ほんまつまらんなあ。
そうこうしてるうちに終業時間や、あー疲れたなあ。
明日もサボらないでくださいねってしっかりイヅルに念押されてん、不本意やんなあ。
そういえばって振り向いたら、知らん間に君はいなくなってた。先に帰るなんてひどいなあ。
急いで君の霊圧をたどると、君はいつものように隊舎の屋根の上に小さく座ってたんや。やから、ぼくも気付かれんようにそーっと、そーっとな…
そしたら君は驚いたことに、ゆっくりこっちを向いたんや。思いもしてなかったから隠れるのすっかり忘れとった。
「…また、来たんですか?」
「またって…どういうことや?」
「いつもあたしのこと見てるでしょ、隊長。」
「なんや…、バレてたん。
結構上手く隠れてたつもりやったのに。」
「分かりますよ、隊長の視線だけは。たとえ霊圧消してたって」
「ぼくの…?なんでや?」
「…だって
あたしも同じように隊長のこと見てましたから。」
にっこりと、可愛い笑顔が初めて自分に向けられたことと今の言葉が嬉しくて、思わず拍子抜けや。
なんや、ぼく達両思いやったんか。
END*
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