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「檜佐木修兵、
ただいま戻りました!」
つい数時間前まで現世に赴き虚討伐。今回の相手はまずまず…中の上ってとこだったか。
その旨を東仙隊長に告げ、報告書の作成のため部屋を出ようとしたところで、隊長に呼び止められた。
「報告書を書く前に行ってほしいところがあるんだ…。」
そして今に至る─
今俺がいるとこっていうと、せっせと脇目もふらず書類整理に集中してる(ように見せかけてる)おまえの隣り。
「なあ…おい」
「…」
さっきからこの繰り返し。返事もしやがらねえから、俺だって気が立ってくる。
なんだよこいつ…、怒ってんのか?
いつもならずっとニコニコしながら修兵修兵ってべったりなくせに、今目の前にいるのは珍しく強張った顔したおまえ。
どうすりゃいいんだ…。
ふと東仙隊長の言葉を思い出す。
『…修兵がいなくても大丈夫なようにって、自分の気持ち我慢してるみたいなんだ。
それでここずっとあんなに怖い顔になってしまって…』
「なあって…」
とにかく話してみねえと…
このまんまじゃ息苦しい。
思い立ったら即行動、おまえの腕を勢いよく引っ張り外へ連れ出す。あんまり強く引っ張っちまったからちっさいおまえが転びそうになったが、そこはナイスタイミングで支えてやる。
とりあえず隊舎の屋根にでも登ってみた。
それでも相変わらず無言&下を向いたままのおまえ。
「なあ、どうしたんだ…
変だぞ…その顔。」
「…」
「東仙隊長から聞いた。
何だよ我慢って…」
「…」
おまえの顔を見つめると、みるみるうちに表情は崩れ泣き顔に。理由も分かんなくて一人焦る俺。
「えっ、なっ!」
「…め…の。」
「えっ?」
「…だめなのっ、
強くならなきゃ、修兵がいなくても強くならなきゃだめなのっ!」
「強く!?」
「…最近…
どんどん修兵が好きって気持ちが大きくなって、
修兵がそばにいないとおかしくなりそうなの…。
手繋いだり、ギュってしてもらったり、夜寝るときも隣りにいてくれなくちゃいや…。」
ぽたぽたと零れ落ちる涙はとめどなく足元へと消える。
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