MALICE/一護

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「なあ、あとで課題写させろよ。」 「わりい、これ啓吾に返しといて。」 「あっ、俺の分もノート取っとけよな。」 あたしはあんたのなんなのさ! いっつもあたしの顔見れば何かしら言い付けて、それを文句も言わないで『うん』の一言で引き受けちゃうあたし。 そうさ、ホレた弱味ってやつさ!話し掛けてもらえるだけで嬉し過ぎるんだから、役に立てるならなんのそのって… あたしが気にいらないのは別にある。 だってクラスの他の女子と明らか態度違うんだもんさ! あの猫の被りよう! こないだ差し入れみたいなのもらってた時の鼻の下が伸びた情けない顔といったら! ちょっとモテるからって調子のっちゃって! なんでこうも違うのよ! もしかして、いやもしかしなくても! あたしいいように使われてるのかな…何でもやってくれる便利屋とか思われてる!!? 「あのさっ、 これ教務室持ってってくれよ。」 今日もまたいつものように頼まれるわけで… って今日のあたしはひと味違うのよ!NOって言ってやるわ、ええ必ず! 「…たっ、たまには自分でやったら…ど、どうなのよ!」 「頼むよ、 俺ちょっと急用でさ!」 「えっ、え…」 「おまえだけなの、頼めるの。」 おまえだけ…なんて。 そんな言葉に一喜一憂する馬鹿なあたし。 「う…分かった。」 易々と引き受け教務室へ足を進めるあたしを再び一護が引き止めた。 「っと、それとさ! もう一つ頼んでいいか?」 「えっ、なに? あたしが出来ることなら…」 少し困ったような、迷いがあるような複雑な表情を一瞬だけ見せたあと、一護はさらっとこう言った。 「俺と付き合って、」 「いーよ… ええええーっ!!!!!?????」 いつもの癖でとっさに返事をして、数秒後に言葉の意味を理解した。 思わず腰が抜けちゃった。 「んな驚かなくても… おまえ断われない性格だから俺の告白もOKしてくれんのかなって思ってさ。 だから今までのは練習つーか、確認つーか?」 いたずらそうに笑う姿もかっこよくて。 「…いやか?」 断われるわけないじゃない。話せるだけで死ぬほど嬉しいこのあたしが。 「喜んで引き受けさせていただきます。」 *END
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