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あたしにとって一番の大事件から早一年…
今こうして当然のように隣りにいてくださるのは、何よりも愛しくて大切なあの方だった。
「朽木隊長…」
夢か現実か分からなくなる。だってほんの一年前は目が合うだけで気を失うくらい、貴方が大きな存在で。
もしかしたらこれは夢でまた目が覚めたら、貴方に叶わぬ恋心を忍ばせて過ごす毎日に戻ってしまうんじゃないかって不安になる。
一年前に救護室に運ばれてから…
きっと運命の歯車が動き出したんだと思う。
じゃなきゃ有り得ないそんな関係。
「目が合っただけで気絶するなんて、どんだけよ!」
「本当びっくりしたー!
いきなり倒れちゃうんだもん!」
「あたしもびっくりだよ…
朽木隊長と目が合うなんて。」
さっきから顔がほてって熱い、風邪なんかバカなあたしがひくわけないし…
訳も分からない思考を巡らせながらも、何度も映し出されるのはあの瞬間のあの方の端正なお顔立ち。
密かな嫉妬を含んだ皆の視線もそっちのけで、ただただあの方を思い出しては顔がにやける。
でもきっとこれっきり。
こんなこと二度とない。
神様があたしにくださった一生分のプレゼント。
何でか分からないけど、不思議と勝手に納得してた。
でもこれで終わりじゃなかった。むしろ始まり。
貴方とあたしの距離はどんどん近付いてったんだ。
嬉しいって感じることが怖くなるくらい…
隣りで静かに湯飲みに口付ける貴方にゆっくり近付くと、綺麗な横顔が眩しかった。
口数の少ない貴方だけど、側にいるだけで不安なんてどこかに行っちゃうの。
「朽木隊長…」
もう何度目だろう…
口に出さなきゃ落ち着かない、目が覚めてしまう気がするから。
ふわっと包まれるあたしの手。
暖かくて優しい手。
それが貴方の愛情表現。
あの頃のあたしには分かるはずもない、すごく優しい手。
今はっきり実感してる。
人生何が起こるか分からない、だから信じようって。
*END
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