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「…もー、何であたしが。」
暑い。
太陽は真上から見下ろしていた、ちょうど正午か。
右手に握られた手紙、左手にはタオル(汗拭き用)。
可愛らしい便箋を睨みつけるあたしは、その視線を目の前のグランドへと向けた。
「いやー…感心。
この暑さでよくやるわ。」
全速力でボールを追いかけるサッカー部員達。その肌の色を見れば、努力が伝わってくる。
暑さしのぎに、ぱたぱたとタオルで仰ぐまね。風なんか起こるわけもないけど。
「休憩ー!!
各自水分補給忘れんなよ!!」
コーチらしき人が言い放つ、と同時に散らばる部員達。
一際目立つ赤髪発見。
標的はあたしから出向く必要もなく、颯爽とこちらへかけてきた。
「なに、珍しいじゃん。
俺に会いにきたわけ?」
嬉しそうに笑うその顔は、うちの豆柴のタロウを思い出させる。
ほんと犬みたい。
「まあね。」
真面目に答えるとひどく驚いて、熱あるのかなんて慌てるから不覚にもちょっと笑っちゃった。
「…これ、
茉希から…読んであげて。」
いわゆるラブレターとかいうやつ。こういうのは自分で渡すから伝わるものもあるんじゃないか、って思うのはあたしだけなのかな。
長居もしたくないあたしはそそくさとその場を去ろうとして、案の定捕まれた右手。
「んだよ、これ。
こういうのはなあ…」
「分かってる!
言ったよあたしだって。恥ずかしいっていうから仕方なく…。」
「仕方なくって…
おまえさあ、」
「渡したから!行くわ!」
強制終了虚しく再び捕まれた右手が痛かった。
「仕方なく引き受けたのか?…仕方なく渡して、
…仕方なく俺に会いにきた?」
ふてくされた顔をしてるように見えるのは見間違いだろうか。
らしくもなく母性本能くすぐられて、可愛いとさえ思えてくる。
「じゃあ、仕方なくなきゃ俺に会いに来ないのかよ…」
口を尖らせてグチをこぼす恋次に、初めてキュンとした…不覚にも。
こんなに萌えキャラだったかしら、こいつ。動揺する自分に驚きを隠せないわけで。
「違うわよ!
あ、えと…そう!タオル貸してあげようと思って…そのついでよ、手紙は!」
苦し紛れの言い訳…こんなんでいいんでしょうか、あたし。
タオルを顔目掛けて投げて逃げようとする。
今度こそ、とも行かない。
暑いってのに後ろから抱き付くバカ。
「ヤバい、かなり嬉しい!」
「離せっ、暑苦しい!」
*END
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