JEALOUSY/冬獅郎

2/2
29人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
いらいらする。 おまえに触れる全てを壊したい。 おまえを俺だけのものにしたいのに。 「ねえ、隊長。 綺麗じゃない?この花。」 「仕事サボって何やってんだ。」 「へへ、なんか外の空気吸いたくなったんです。」 切なそうに微笑む顔が、どこか暗闇を帯びていた。 またあいつと何かあったのか。 「気が済んだらさっさと戻れ。」 踏み込めるわけがない。聞きたくもないあいつとのことに口も挟めない、俺は臆病者だ。 「…聞かないんですか? 何があったか。」 「…。」 「…別れたんです、あたし達。距離置こうってあっちから。」 目からは止めどなく涙が溢れているのに、必死に笑顔を作ろうとする。 「あたしだけが…好きじゃだめみたいです。 どんどん気持ちが離れてって…」 気付いたらこの腕が抱き締めていた。 「もういい。 泣きたいなら思いっきり泣け。」 小さな嗚咽が風にのる。 何で俺じゃない? 俺なら絶対に泣かせたりしないのに。 震える体を包むしか出来ない、俺は無力だ。 「おはようございますっ、隊長!」 「…もういいのか?」 「はいっ! 隊長が休暇をくださったおかげでもうすっきり! 今日からまた頑張ります!」 そそくさと自分の机へ向かう顔は、この間のそれとははっきり違って、明るく活気があった。 時折見せる笑顔はいつもの屈託のない微笑みで。 なあ、 その笑顔を壊すやつが憎い。 その笑顔が俺だけに向いてほしい。 もう我慢はしねえ。 *END
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!