不思議な薬

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 うちは今、勝手に羽ばたく翼に身を任せ、自宅付近の空を飛び回っている。テレビカメラか何かがうちをとらえたら、きっと大変な騒ぎになるだろう。  などとノー天気なことを考えていたら、今度は、目の前にチューリップのような葉っぱが垂れ下がってきた。 「何だこりゃ?」  手で払おうとすると、何故か頭の中心がこそばゆくなる。そこで思い切って両手を頭のてっぺんにやってみた。 「何これ」  たまたま、鏡張りのような看板の前を横切ったので、自分の姿を確認してみた――  そこには、背中に大きな羽を生やし、頭のてっぺんにはチューリップじみた花を咲かせているオバサンの姿が写し出されていた。 「マジ?」  頭のお花よりも、己のやつれたオバハン顔にショックを受ける……花は二の次ですよ、ええ。  勝手に羽は生えるし(現在飛行中)、頭に花は咲くし(現在光合成中?)、いやんなっちゃうわ。  なんて、ブルーな気分で空中を漂っていたら、突然、背中の異物感が無くなった。 「およ? よよよ!!」  今まで重力に逆らっていた体が、急に重力に従うなんてっ! どうやら羽が取れてしまったみたい!? あぁ~…………
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