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「そうだ。そこに来い」
男はそう言うとアランに背を向けようとした。
「待てっ!なんで俺がそんなところまで行かなければならない!?」
アランは去ろうとする男の背中に叫んだ。
「家族の仇をとりたいのだろう?ならつべこべ言わずにそこへ来い」
男は首だけをアランに向けて言った。
「…最後に一つ。お前の名は?」
「…ゾディア・ラクール」
ゾディアは自分の名を名乗ると空高くジャンプし、姿を消した。
「…ゾディア・ラクール…」
アランは拳を握りしめながらゾディアの名をつぶやいた。
「…アラン、大丈夫か?」
「…大丈夫、大した傷じゃない。だが…手も足も出なかった…」
アランは暗い表情のまま、刀を鞘に収めた。
その時だった。
「きゃああああああ!!」
突然、森の中に女性の悲鳴が上がった。
「――今のは!?」
「奥だ。行くぞファルス!」
アランはそう言うと森の奥へと走った。
アランが森の奥へ行くと、そこには全身が青い体毛に覆われた狼のような魔物――ダイアウルフの群れに囲まれた二人の女性の姿があった。
「ぐっ…姫様、下がっていてください。ここは私が…」
ピンクの髪を後ろで一つに縛り、白い鎧とマントを纏った女性が言った。
「でも…エレン。さっきので怪我したよね…?」
金色の長い髪を揺らしながら純白のドレスを着た女性は言った。
「まさか本当に森の中にダイアウルフが住み着いてるとはな…」
アランは木の陰から様子を見ながら舌打ちをした。
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