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二人は西の森行きの馬車に揺られていた。
「…それにしても今までにダイアウルフが森に出るなんて聞いたことないな…」
アランはギルドで渡された依頼書を見ながら言った。
本来、ダイアウルフは山などの標高の高い地域に生息している。
そのダイアウルフが山を下りてきて森に住み着くなど普通ではあり得ない。
「『魔王』が本格的に人間を攻撃してくるってことかな…?」
ファルスは首を傾げて言った。
魔王。
突然、三年前に現れ、世界各地に魔物を召喚した謎多き存在。
昔にも魔王が現れた時代があり、古い文献などに魔物については記されていたが、魔王については未だ謎なのだ。
今はこの世界の最北の地、『シルヴァラント』を拠点にして人々を魔物に襲わせている。
その時、アラン達を乗せていた馬の様子が急におかしくなった。
「おい、どうした?」
アランは馬車の運転手に問い掛けた。
「そ、それが…」
運転手はおそるおそる前方に指を差した。
そこには体長が1メートル程の棍棒を持った人型の魔物が三体いた。
「ゴブリンか……馬もやつらに怯えているのか…」
アランは馬車から飛び降り、腰にさしていた刀を抜いた。
「よし、俺も行く!」
ファルスも馬車から飛び降りて背中に背負っていた大剣を構えた。
「お客さん!大丈夫なんでしょうか!?」
運転手はかなり焦った様子で言った。
「そこで見ていろ」
アランが右手に刀を持ったまま、ゴブリンに向かっていき、ファルスもそれを追うように続いた。
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