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人形が喋って動く…そんな事態に遭遇したら人間はどうするだろうか?
この出来事を単純に楽しむか、それとも関わり合いになりたくないと逃げだすか…。
あいにくと愛美は後者に近い。
人形が動いて喋るなど祟りではないか。
とはいえオカルト現象に真っ向勝負を挑む度胸もないだろう。
これも自分の不運だとされるがまま流されているだけだ。
ノートを放り出し、なるべく距離を置いてなるべくこれ以上の被害が出ないようにする。
人形に敵意は感じられないが何だか怖いものは怖い。
「勝手に書物に手をかけた事は謝りますから…。」
微妙な空気の中、先に頭を下げたのは人形の方である。
どうやら本棚の本の隙間から本を取りだそうとしていたらしい。
「いや、好きなだけ読んで頂いてかまいませんよ。私こそいきなり攻撃をしてしまい申し訳ありません!!」
祟りが怖いので愛美はしこたま腰が低かった。
「お気に召す書物があるかはわかりませんが…。」
愛美の愛読書はごく普通の料理や手芸の本である。
人形が知りたがっているような情報はあまり載っていないと思った。
「いえ、人間がする事に少々興味があるだけで。」
人形は穏やかな笑みを浮かべた。
「私は生まれて間もありません。
人間の言葉は使えるようですが人間の事は全く知らないのです。
だから書物を読んで知識を得る事を覚えました。まさか追い出されるとは思いませんでしたけど。」
追い出される…やはり喋って動く人形ならたぶんそうではないだろうか。
できればこちらとしてもフリマのあの店員というか店主に突き返したいけど、また会えるとは思えない。
「人間の知識を下さい。」人形は愛美を見つめはっきりと懇願した。
「経緯はどうあれ自分が生まれた以上、黙って滅びるつもりはありません。私はこの人間の世界で生きていくつもりです。そのための知識をどうか…。」
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