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明らかにこの値段はどうかしている。
フリマでは相当法外な値段だった。
たぶん店員の作品なのだろうが、こんな商品を誰が買うんだろうかとさくらは思っていた。反対に店員の作品ならそれはそれで破格に安い。
「おじさん。」
呆れたさくらに愛美が口を開いた。
「これ…一つちょうだい。」
とんでもなく破綻した金銭感覚だった。さくらは慌てて止めようとする。
「…ちょっと待って愛美っ!」
払えない額じゃないが、女子高生がいきなり払っていい額でもない。
「もうちょっと見て行こうよ!きっともっといいのが見つかる…。」
「もういいよ。」
愛美は小さく首を横に振った。
「あたしのためにここまで頑張らないで…あたし、さくらがいつも遊びに連れていってくれるだけで十分楽しめているから。」
愛美は二体の人形のうち、金色の髪の人形を選び、本当に買ってしまった。
諦めの悪いさくらのこと、このままではずっとフリマ通いに愛美を連れて引きずり回す。
自分も親友も無理をさせたくなかった。
「…やれやれ。」
さくらは小さくため息をつき、何かを吹っ切ったような顔をして店員に声をかけた。
「おじさん、あたしにもこの人形をもらえない?」
店員は別に困った顔ひとつしないで残りの銀色の髪の人形をさくらに売った。慌てたのは愛美の方。
「…さ、さくら!」さくらは人形の入った袋を持ち上げてニヤリと笑った。
「これであたしたちはお揃いだね。」
15000円もあれば簡単な服は揃えられる。この年齢で今さら人形もないだろうに。
無茶苦茶な…と愛美は思った。しかし困った事などほとんど何もなかった。
せいぜいが親友に大金を使わせたぐらい。
愛美は親友の優しさに感謝した。
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