第一章

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 私の座った位置からは、細長いテーブルの上にある幾つもの籠と、風になびく赤いリボンしか見えなかった。  私は立ち上がりお尻に付いた芝生を軽くはたく。  そして、手作りクッキーの店の前で足を止めた。  籠には透明のフイルムにラッピングされた色んなクッキーが置いてある。  その一つを手に取る。  ウサギの形をしたクッキーが5つフイルムに入り赤いリボンで縛ってあった。 「それ僕が作ったんだよ」  頭を上げると私の頭2つぶんほど大きい男の子が私を見ていた。 「かわいいでしょ? ウサギさんだよ」  にっこりと笑うと彼の目は無くなるんじゃないかと思うほど細くなった。  これが私と彼の運命の出会いだった。
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