第二章

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 彼の笑顔はあの時と変わらず笑うと目が細くなった。 「僕のクッキー買ってくれた人だよね?」 「憶えてくれてたんだ」   「僕、記憶力いいんだよ」  私は彼の座るベンチの横に腰掛けた。彼は私を見てまたニッコリと微笑んだ。 「なぜこんな所でお祈りしていたの?」  さっきと変わって彼の表情は曇っていった。 「聖アントニウスにお祈りしてたんだ」  捜し物がある時、カトリック信者に頼りにされているのが聖人、聖アントニウスだ。私も無くしたものが見つからない時よくお祈りした。  彼は何を無くしたのだろうか? 「何を探しているの?」
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