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私の話を彼は楽しそうに聞いていた。子供っぽい質問をしてみたり、おどけてみせたり、ころころと変わる彼の表情を見ているのが私は楽しくなっていた。
たまに話すたどたどしい日本語も彼が話すと可愛らしく思えた。
「若菜ちゃん、僕が作ったクッキーおいしかった?」
「うん。美味しかったよ」
彼は照れを隠すようにベンチからなげだされた足を何度もバタバタとさせた。
辺りは薄暗くなり手を繋いだ親子が楽しそうに帰って行く。
彼と私はそれをじっと見ていた。
「僕もお母さんに会いたくなっちゃった」
彼は立ち上がり私に深くお辞儀をした。
「若菜ちゃん、今日はありがとうございました」
つられて私も立ち上がりお辞儀をした。
「じゃあ帰るね!若菜ちゃんバイバイ」
彼は軽く手を振って静かになった公園を駈けていった。
「バイバイ。またね!」
私は彼の後ろ姿にいつまでも手を振った。
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