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どうして彼は居ないの?
『弟君は既に亡き者に』
どうして彼を奪ったの?
私達が何をしたというの?
私達はただ産まれて来ただけなのに。
ただ、
双子としてこの世に産まれただけなのに。
彼が後に産まれて来た
それだけで命を奪われたというの?
そんなのおかしいわ。
フラフラと夜の長い長い回廊を灯りも持たずに歩く。
ズルズルと長い長い不似合いなドレスを引き摺って。
アテもなく辿り着いた場所は普段は誰も立ち寄らない王立図書室。
そういえば、彼は此処で絵本を読むが好きだった。
古びた錆び付く重い扉を潜り抜け。
奥へ奥へとフラフラ。
フラフラ。
不意に眼に留まったのは一冊の古い伝記。
この世界の歴史書。
既に大概の読み書きが出来る私はパラリぱらりとページを捲る。
そして知る。
彼を奪われた本当の理由。
『王家ニ産マレシ双子ハ世界ヲ混沌ヘ誘ウ』
そうか。
そうだったのか。
こんな。
こんなクダラナイ理由で、
私は彼を失ったのか。
その伝記には、
各国の数々の双子の物語が、
まるで魔王の悪行をなぞるように、
人間の都合の良いように、
綴られていた。
そうか。
王家の双子は混沌を招くのか。
それならば。
私も期待通りに混沌を誘おう。
これは復讐ではない。
私から彼を奪った人間達への当然の報いだ。
自然と喉の奥からクツクツと笑いが込み上げる。
ドサリと堅い床に滑り落ちる分厚い書。
『ぁは‥…はは』
悪ノ娘と呼ぶならば
呼ぶがいい。
翌日の朝。
毒々しい決意を胸に
私は民衆共の前へ出る。
新王誕生に歓喜に湧く愚民共よ。
これから始まる悪ノ娘の物語を、
心行くまでとくと楽しむがいい。
『さぁ、ひざまずきなさい!!』
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