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「召使の志願者?」
頭の悪いメイドがあたふたと涙声で説明してきた話は、裏城門で喚いて居るのは王女付の召使に雇えと執拗く食い下がる少年だとか。
悪ノ娘ノ召使?
どうせ城下の小汚い子供の浅知恵だろう。
城で働けば食い扶持には困るまいとでも考えたのか。
全く。
この国の何処にこの悪ノ娘に付き従えたいと重う人間が居ると謂うのか。
‥……召使か。
そう言えば最近、生意気な眼付きの召使を独り、斬首にしてやった記憶が在る。
私の手足にするならば未だ教育の余地のある子供の方が得策か‥…。
まぁいい。
顔位なら、一度見てやっても良いだろう。
「良い。謁見の間に連れてきなさい。城で働くのを許すかどうかは私が決めるわ」
「はっ、はいっ!!只今っ!!」
私の機嫌を損ねたと謂うのにお咎めが亡かったのに驚いたのだろう。
メイドは慌てて顔を上げる。
涙と鼻水でグチャグチャに汚れた穢い顔のまま、
頭の悪いメイドはバタバタと廊下を駆けて行った。
それを視線だけで見届けて。
私は玉座の在る謁見の間へゆったりと歩き出した。
辿り着いた先の金細工の豪華な装飾が施された重い扉をゆっくりと押し開ける。
視界に映り込む玉座。
この広い部屋と玉座はこの上亡くとても居心地が良い。
この黄ノ国の頂点に君臨する者だけが座する事を許された唯一無二の場所。
その高みから見下す景色は格別だ。
私以外の全ての人間が私に無様に頭を垂れる。
愉快極まりない。
それでも私の心が決して満たされる事が亡いのは、
私の隣に彼が居亡いから。
彼さえ隣に居てくれたなら他に臨む物等在る筈が亡いのに‥…
暫く玉座の前で眼を閉じて居ると、あの頭の悪いメイドの声が広い室内に耳障りに響いて来た。
「王女様、召使の志願者をお連れ致しました。」
独つ重い息を吐いて閉じて居た瞼を持ち上げる。
緩慢に踵を返すと態と乱暴にドッカリと玉座に腰を据えた。
長いドレスの下の足を組んで、右手に持つ大振りの扇をバサリと広げて口元を覆い隠す。
眩を細めて眉を顰める。
むざむざ愚民如きに私の顔を見せて遣る気は微塵も亡い。
雇うと決めたならば素顔の独つも見せてやろう。
「良い。入りなさい。」
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