第一話、少女×魔術×ロングコート

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 今でも昨日の様に忘れられないでいる。  ドキドキしながら、薄暗い納屋の扉を開ける。途中、錆びているのかキィーと甲高い擦れた音が響き、ギョッとした。  そして、中に一歩踏み込めば……。  まあ、小さい自分に書物の山とかよく分からない石像とか全く興味をそそられない訳で、ガッカリした。  自分的には、あの祖父さんが止めるくらいだから。中にどんなお宝が眠っているのか興味津津だったんだが、期待は呆気なく裏切られた訳だ。  特に用も無い納屋に、いつまでも居る必要なんて無い訳で……バレない内に出ようと扉に手を掛けた。その時――  ソレは、狙ったかの様な絶妙なタイミングで……ゴトリと。目の前の床に落ちたのだ。  ただでさえ、入る事を禁じられた場所に居て目前で何かが落ちたら、どう対処する?  勿論、まずその落ちた物を確認し元の場所に戻すよな?  それが、盲点だった……。  当然、上記の手順に従った訳なんだが。  それが、不味かった。  落ちた物は、金色の天秤。後に知ったのだが、この世界で“逆裏の天秤”(ぎゃくりのてんびん)と呼ばれる大層な魔道具らしい。
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