動きだす二人の時間

13/33
前へ
/263ページ
次へ
海岸に着くと彼女は海辺を歩いていた。 『ああ……シルビア……』 まるで時が戻ったようだ。 昔と変わらぬ彼女が歩いている。 そのしぐさも変わっていない。 シャスタはそんな彼女が愛しくて堪らなかった。 彼女がこの胸に飛び込んできてくれれば……愛していると言ってくれさえすれば……もう何も望まない。 シャスタは望みを託してシルビアの傍へ近づいた。 「ありがとう、来てくれて……。」 シャスタに気づくと彼女はにっこり微笑んでそう言った。 『いいえ、嬉しいです。どうぞ、乗って下さい。』 ドアを開けると彼女は戸惑っていた。 「ごめんなさい、もう少し歩かせて……。」 『はい。』 ドアを閉め、彼女の横についてゆっくり走る。 「本当だったのね。貴方がコンピュータだって事……。」 『嫌……ですか?機械に愛されるのは……。』 その質問に彼女は首を振った。 「昨夜ね、夢を見たの。この海岸を貴方と一緒に歩いている夢。私の左手にはこのリングがあったわ。あれはきっと前世の記憶なのね。夢の中で私……幸せだった……。」 『私達はいつもここでデートしていたんですよ。』 その言葉で彼女は確信した。 .
/263ページ

最初のコメントを投稿しよう!

95人が本棚に入れています
本棚に追加