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「お前はまだ彼女の事を……?」
『当然でしょ。以前と変わらず愛してますよ。いえ、それ以上にです。』
「そうか。早く見つかると良いな。」
『はい。貴方はもう結婚しないんですか?』
「ん?ああ。あんな思いをするのはもう御免だ。」
マイケルはシルビアが亡くなった数ヶ月後に結婚した。
いつも心のどこかにいたスティービーと……。
だが、二人は共に生活する間もなく引き裂かれた。
式の直後に、マイケルを狙った銃弾を浴びて彼女はこの世を去った。
彼を庇い、純白のドレスを血に染めてスティービーは息絶えたのだ。
愛する者を失う悲しみは二度と味わいたくない。
「あの時初めてお前の気持ちが分かったよ。」
『ええ。私もあの時は貴方が心配でした。私の経験からいって、平静でいられるはずがなかったんですから。』
「だから俺達は仕事に集中した。俺はスティービーを。お前はシルビアを忘れる為に……。」
『確かに仕事に集中はしましたが、貴方とは理由が違います。貴方は彼女そのものを忘れようとしました。でも私はシルビアの死を忘れようとしたんです。彼女ではなく、死をです。』
彼女を忘れる事などできやしない。
以前にも増して愛しているのだから。
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