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翌日、シャスタは海にいた。
海辺を歩く彼に声をかける女性は数知れず、断るのもいい加減うんざりしていた。
「すみません、私はこの通り結婚してますので……。」
左手の指輪を見せる。
これには彼女だけでなく、遠くからチャンスを窺っていた女性達にも効果があった。
「これで一人になれる……。私が声をかけて欲しいのは貴女なんですよ、シルビア……。」
呟きながらシャスタは歩き始めた。
いつの日か巡り逢えるであろうシルビアを思い、微笑みを浮かべて彼は歩いた。
だが彼女は現れない。
今年も現れないのかと、ため息をつく。
砂浜に腰を降ろし、波打ち際を眺めた。
愛しいシルビアの姿がフラッシュバックする。
笑いながら裸足で歩く彼女。
綺麗な貝殻を見つけ、嬉しそうに拾って見せるシルビア。
そんな姿が思い出され、自然と笑顔になる。
だが……悲しみが襲う。
「逢いたい……。早く貴女に逢いたいです……。」
涙で視界がぼやけた。
そのぼやけた視界の中をシルビアが歩いている。
貝殻を拾い、自分に見せようと向かって来る。
その彼女は微笑んでいて……。
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