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かぶりを振り、俯いた。
何度も見るフラッシュバック。
今はその思い出が辛い。
「どうしたの?具合でも悪いの?」
「いいえ……心配要りませんよ、シ━━」
声をかけられ、無意識に答えてハッとした。
今の声は……。
俯いたままの視界に女性の足が見える。
今のは現実……?
そんな事はあり得ない。
だが……。
恐る恐る顔を上げたシャスタは、目の前の女性を見て言葉を失った。
「大泣きしちゃって……失恋でもした?貴方をふるなんて酷い人ね。」
大粒の涙を流すシャスタを見て、膝をつきハンカチで涙を拭く女性。
見ず知らずの男性だが放っておけなかった。
確かにシャスタほどの美男子を放っとく女性はいないだろう。
だが彼女は違った。
容姿とは関係なく、どこか懐かしい感じがするシャスタを放っておく事ができなかったのだ。
ふと、驚いたまま自分を見つめている彼と目が合った。
止めどなくあふれる涙を見て、核心をついてしまったのかと慌てだす。
「あ、ご、ごめんなさい、余計なお世話よね、え……と、お詫びにあげるわ。」
謝罪しながらピンク色の貝殻を手渡す女性。
綺麗でしょ、と微笑んでいた。
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