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もう11月か…
昊は、近くなった、どんよりとした天を見上げて呟いた。
辺りの木々は、もうすっかり枯れきって冬眠の支度を始めている。
「昊!」
「あ、千尋」
中学の時からの友達の千尋が後から掛けてきていた。
時計を見ると8時18分。
早くしないと8時20分に鳴る予鈴に遅刻だ!
風を切って千尋は昊を追い抜いて行った。
昊はそれを追うように、学校まで全力で走った。
「走れー!」
門番の教師が門の前でのろのろと歩く生徒に叫んだ。
昊と千尋はギリギリセーフ。
2人は息を弾ませてにっこり笑った。
変わらない朝、変わらない1日。
ひらりと一枚の枯れ葉が2人の目先に落ちて、吹いた風に流された。
2人は、天を見上げた。
そこには枯れ葉ひとつ無い木々が寒空に広がっていた。
「冬だね」
「5度目のね。」
高校2年生、短かったな。
寂しい冬の訪れ。春はもうすぐそこなのに。
教室にはいつもの面々。
寂しくなった心には、最高の薬だ。
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