BSS #3 『天気雨』

6/7
前へ
/27ページ
次へ
私は一人で立っていた。 馬は倒れ、剣は毀れ、鎧は砕け、兜は割れていた。 そして、私の前に立つのは、敵の弓兵隊。 その隣に、あの弱腰軍師が、意地の悪い笑みを浮かべて立っていた。 内応だったのか。 そうつぶやこうとしたが、何も出てこなかった。 道理で、斥候隊が帰ってこないわけだ。 味方の軍師に呼ばれれば、兵は付いていくだろう。 奴は私に向かって何か言っていた。 正直、もう何も聞こえない。 そして最後に、怒鳴るように叫んで、手を振り上げ、そして振り下ろした。 敵の弓兵隊の、弓弦が擦れる音がする。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加