BSS #4 『東雲草の去りて』

2/6
前へ
/27ページ
次へ
ついこの前まではあれだけ暑かったのに、もうコートが要るくらいに寒くなっていた。 彼が徴兵されて、もう一カ月になろうとしている。 俺の家の玄関には、まだ東雲草が咲いていた。 「お前、いつまで咲くつもりだ。他のアサガオ達はとっくに枯れちまったぞ」 この東雲草に話しかけるのが俺の日課になっていた。 もともとこれは彼が丹精込めて育てていた東雲草だった。 彼が輸送列車に乗る前日に、俺にくれたものだ。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加