かかしとななし

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この世界は戦争をしていて、たまたま私はこの世界に生まれました。 毎日爆音が鳴り響き、荒廃した大地が広がるだけの、何の面白味もない世界です。この世界での私の生い立ちはありがちです。4歳の頃に親が戦火に焼かれ、『子供』から『孤児』になりました。悲しくはありませんでした。母も父も、私より戦争を愛していました。だから、その戦争に抱かれて死んだ2人は幸せだったのだと、幼いながらに思いました。彼らの遺骨を戦場に蒔いた後、私は孤児院に入りました。そこには同じように孤児になった子が沢山いました。誰も自分の境遇を嘆いていなかったけど、笑顔を見せる子もいませんでした。私と同じように、何も感じない、面白味のない子達です。 そんな孤児院も灰になりました。院内には子供達が取り残され、隣人を愛しなさいと謳うシスターと共に真っ赤な炎に抱かれて消えました。私がちょうど水を汲みに出かけていた時の出来事でした。私はまた、死にぞこないました。 孤児院の火が消えるまで3日かかりました。赤い夕日にを背景に、真っ黒に焼けたかつての子供達は、皆苦しげに身をよじっていたり、嘆いたりしながら事切れていました。その無残な光景を、私は無感情なまま眺めていました。 家を失った私に生き残る手段は限られました。森は焼き払われ木の実もありません。町へ入るにはこの広大な砂漠をわたるより他にありません。しかしもう限界でした。私は大地にひれ伏してその時を待ちました。その間…自分の死の瞬間ですら、私は何も感じませんでした。 「おい。子供。』 沈みかけた意識を瞼と一緒に持ち上げました。  灼熱に降り注ぐ太陽をさえぎった真っ黒な逆さ十字が、倒れた私を覗き込んでいました。
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