二人の想い

4/6
前へ
/121ページ
次へ
[積極的な人だな] そう思った。 彼女の誘いで、病院内の食堂で食事をする事になった。 「お忙しいところすみません、どうしても気になってる事がありまして」 彼女はコーヒーを啜りながら上目使いで切り出した。 「気になる事って、公園の?」 公園へは読書をしに行っていた。別に隠す事でもないし素直に言ってみようと思った。 「はい、あまりしっかりは見えなかったんですが、毎日来られてたので雰囲気で覚えられました」 彼女はあの時も目が追いきれてなかった。やはり目が悪るかったんだ。 「いつも本読みに行ってたんだけど、まあ季節も良い頃だしね。それより、それなんだけど」 僕はスケッチブックを指指し彼女を見た。やや大人びた顔立ちだが、どこか幼さを感じさせる。恐らく20前後、同じ歳くらいか。 「あ、趣味と言いますか、下手なんですけど見られますか?」 彼女がスケッチブックを差し出して来た。 音楽でも絵画でも、僕は芸術に魅力を感じる。それだけに絵には大変興味がある。下手というのは建前だろう、いつも持ち歩いてるようだし、趣味という事ならそれなりの技量なのだろう。 僕はスケッチブックを受け取り開くと、反射的に声をあげてしまった。 「え…これって…」
/121ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加