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その日のディナーが終了したのは10時を少し回った頃だった。
開店した時と余り変わらない状態の店内の片付けが終わり、11時にレストランの2階にある僕らの自宅に帰った。
兄さんはシャワーを浴びるとすぐにベッドに入り眠りについた。
僕はルビー色に輝く、白い湯気の立つホットワインを飲みながら帳簿に目を通していた。
ここ1ヶ月間、心配で眠れない。
兄さんは知らないがお店の経営状態はあまり良くない。
その為に僕は明日、銀行へ行って馬面の融資担当と話さなくてはいけない。
全く気が重い。
兄さんがもう少し、客の為に気を使ってくれれば経営も上手く行くと思うのだが。
だが兄さんには心配かけたくは無い。
僕は明日、融資担当に一発逆転のプランを話そうと思う。
上手く行くかは分からないが何もしないよりはマシだ。
僕ら兄弟の運命を握っていると言っても過言じゃない。
両親から継いだレストランを潰す訳にはいかない。
僕は、酔いが回ってきたのか演技がかった、大袈裟な決意と拳を固めた。
僕は自分でも、それが可笑しくなって、寝息を立てている兄さんをチラッと確認した。
なんだか、一晩寝かせたラブレターの様な恥ずかしさを勝手に感じていた。
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