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暇を持て余した厨房ではマナブが子牛の骨から採った出汁を濾していた。
フォンドボ、今ではあまり使われないモノの一つだ。この出汁をベースに様々なソースを仕立てる事が出来る。アメリケーヌ、シャルキティエール、ぺリグー、ぺリグディーヌ、食材の数だけのソース……しかし、今や料理専門学校以外では殆ど目にする事が無い。
これも時代の流れだ。
時代の要求に合わせて、変化を加えるという事は必要だと、僕は思う。
そもそも、フランス料理と言うものは常に進化を続けてきた。
スペイン、ドイツ、イタリア等、国の周りを囲む外国に侵略され、文化的にも影響を受け、良いところのみを吸い上げて残し、フランス料理というものを形作ってきた。
フランス料理はフランス人の血であり肉である。
石炭で走り続けてばかりはいられない。ゆらゆらとした汽車に乗りたがるのは、物好きか、時間とお金の有り余った年寄りだけだ。
環境に適応できねばいずれは消える。
兄さんは業者から届いたファックスとにらめっこをしながら唸っている。
良い食材は使いたいが、王様に振る舞うようにはいかない。
小さなお店は、そこそこの素材で良い味に仕立てなければいけない。
星の輝くような店では、まず食材ありきなのだ。
その事を知らず、同じ土俵で戦わせるような真似を客はする。
マシンガンを背負ったシュワルツェネッガーと、宮崎県知事を戦わせるようなモノだ。
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