768人が本棚に入れています
本棚に追加
もう一回抱き締めようとした時だった。
「…セレナ!どこにいる!?」
おそらく商人だろう。
大きな声で誰かの名前を呼んでいる。
少女はびくっとして立ち上がった。
そのせいで、俺の腕は虚しく中を掻く。
「行か…ないと…」
「君がセレナちゃん?」
相手は小さく頷いて子猫を地面に降ろした。
「さょ…なら…」
消え入りそうな声で呟き、車の方に行ってしまった。
その場に残された俺はガクッと項垂れる。
「儚い恋だった…」
「何が儚いんですか?」
びっくりして後ろを振り向くと、呆れ顔の鈴と苦笑いしている翼がいた。
「はぁ…」
「何で私達を見るなりため息をつくんですか?」
「来るタイミングが悪かったですか?」
どうしてこんなに態度が違うんだか…
最初のコメントを投稿しよう!