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少し顔を上げて見つめると、真っ赤な顔の彼がいた。
今にも湯気が出てきそうなくらい赤い。
「…?」
陸斗様は優しく触れるようなキスを返してくれた。
こんなに積極的な自分を今まで見たことなかった。
人に愛されることも無かったし、見にくる客達は厭らしい目付きだったから…
この人は違う。
私を優しく包み込んでくれる。
再度、深いキスを求めようとした時だった。
「…こんばんは!」
バンッと勢いよく扉が開くと同時に、怒鳴るような挨拶が部屋に響く。
「「……」」
私と陸斗様は唖然とした。
怒鳴り声の主は、黒髪の女の子だった。
相手は私達を見て、だんだん赤くなる。
「あ、えと………お邪魔しました」
さっきとは違い、蚊の鳴く様な声で言うや否や、逃げるように部屋を出ていってしまった。
「…ぁぁぁあっ!?ちょ、待てっ!!」
陸斗様はいきなり大声を出すと、彼女を追いかけた。
私はまだ、きょとんとしたまま一人広い部屋に残される。
「…誰…なんだろ…」
あの慌て様からして、親しい人なのかな?
それとも…恋人?
疑問に思いながら私も後を追った。
* * *
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