8人が本棚に入れています
本棚に追加
「八重沢空────!逃げずに来たな!」
「何で俺がお前みたいな三下相手に逃げなきゃいけないわけ?」
溜め息混じりの俺の発言に安堂はかなり不服だったらしく飛びかかって来るんじゃないかという勢いで文句を吐く。
そんな彼を味方のメンバーは必死で押さえた。
「八重沢てめ…かっこいいからって調子こくな!」
「安堂!落ち着け!」
「……八重、お前相当妬まれてるんだな」
新谷さんの一言に俺は最早溜め息しか出なかった。
「空先輩」
「!」
試合開始直前、真剣な顔をした西川に呼ばれ敵に背を向ける。
「今思い出したんスけど…あの安堂とか言う奴、九州地区じゃ有名なSGッスよね」
「……………………。」
西川の言う通りだった。
今大会の九州地区代表のSG安堂と言う男の評価はかなり高かったのだ。
勿論、俺よりも─────。
俺は去年はPGだったからPGとしての評価は高い……が、SGとしての評価は全く無いに等しい。
期待値だけがやたら高いのだ。
「どうします?いつもみたいに空先輩の所から攻めちゃっていいスか?」
「………取り敢えず一回ボールくれ。どんなもんだか見てみたいし」
「了解」
軽くハイタッチを交わしてから列に戻ると直ぐ試合は始まった。
いつも通り新谷さんがジャンプボールを勝ち取り、西岡がキャッチ。
そして俺にパスが回ってくると─────
「来い!八重沢!」
最初のコメントを投稿しよう!