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物凄い気迫の安堂に息を飲む──────と言うかコイツ……
隙がない
完璧な身構えに俺は驚きから双眸を丸めて息を呑む。
動けない、そう思った時俺の後ろを走ってくる一人のチームメイトが見えて俺はノールックで軽く左手一本で前へとボールを投げた。
「!」
「ナーイス、笠島さん」
笠島さんはそのままゴールまでドリブルで持って行き、シュートを決めた。
187㎝の巨体から繰り出されるダンク。
それが黎学の最初の得点だった。
「八重沢……今見えてたのか?」
「視野の広さなら誰にも負けねぇよ」
後方から走り込んで来たにも関わらずのノールックパスに安堂は驚きを隠せないでいた……が、彼の闘争心に火を点けたのは間違いなく先程以上に集中力の増した目で俺を睨む。
「俺は─────お前を越える!」
「!」
「その為に俺はここまで来たんだ!」
「……………………。」
「小学生の頃のお前の勝ち誇った瞳……今でも忘れられない」
コイツは…
「今日こそは勝ってお前にギャフンと言わせ────」
「ギャフン」
「………………は?」
「なんてね」
コイツは小学生の時から、ずっと前に進めずにいたんだ。
「来いよ、安堂」
「!」
俺は6年に上がる頃安堂の居た学校を転校した。
何も言わずに─────…
だからコイツの中では何も決着が着いていないんだと思う。
「本当のSGはどっちか……今日この場で決めようじゃん」
「!おぉ!絶対お前を倒す!!」
そこからの試合は凄まじいものだった。
殆どのボールが俺と安堂に回されお互い点の取り合いになっていたのだ。
両エースの戦い──────そんな台詞が会場内をざわつかせた。
「空先輩そろそろ…」
「いいから」
「!」
「回せ」
俺の体力はほぼ限界に近かった。
勿論安堂も。
残り5分、点差は俺らが二点負けていた。
でも俺は楽しくて仕方無かったんだ。
「安堂」
「!」
「最後に勝つのは俺だから」
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