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「空先輩!」
渡されたボール…それを両手でキャッチし、ドライブで安堂の横を抜いた。
安堂も遅れて追い掛けて来たけど気にも留めずレイアップシュートを決める。
これで同点…残り時間も少ない。
ここで決められてしまえば元も子もないわけで
「八重沢、わかってんだろ?」
「おー、ここがポイントだよ。お前の癖も大分わかったしね」
その言葉に安堂は表情を変える。
コイツの癖はだいたいわかった。
この場面、コイツがパスを出す確率は0%。
必ず1on1で仕掛けてくる。
俺だってこの場面なら絶対パスはしない─────エースとして抜く自信があるから。
コイツだってそう思ってる筈。
だって…
俺らはどこか似てるから。
「初めてだわ」
「何がだよ?」
「お前みたいなプレーヤーに会ったのがだよ」
それは安堂も感じていたみたいでひとつ首を縦に振りながら両手でボールを受け取る。
ゆっくり彼はそれをバウンドさせ始めると館内にボールをつく音が響き渡り、俺は安堂をジッと見据えた。
段々と鼓膜に響くボールの音が代わり始める─────来るか。
そう察したと同時に安堂は一気に駆け出すが俺もほぼ同時に駆け出したが為になかなかゴールへと向かえない。
「クソッ……!」
悔しげに舌打ちをひとつ、そして無理な態勢から突っ込んで行き無理矢理シュート。
その光景はまさしく自分を見ているようだった。
海輝兄にあって俺に無いもの──────今分かった気がする。
がむしゃらな事が悪い訳じゃない。
でもがむしゃらな中に冷静な判断が出来る自分を保っていなきゃいけない…俺はそれが出来てなかったんだ。
「甘いっつの、安堂」
すかさず安堂とゴールの間に割って入りボールを西川に向かって叩き落とす。
「ナイス!空先輩!」
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