夏大4日目

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しっかりとボールをキャッチした西川はそのままゴールへ向かってドリブル。 黎学のカウンター……と思ったのに相手のCやFは思いの外戻りが速くて。 「クッソー!!!」 「西川!」 なりふり構わず突っ込んで行く西川に後方から名前を呼ぶ。 俺が走って来ていた事に驚いたんだろう────そりゃそうだ、俺のスタミナが完全に切れているのは一目瞭然だったから。 「!頼んます、空先輩!」 シュートを打つ寸前で俺へのパスへと切り替えられ、スリーポイントラインより少し後ろの位置で俺はボールを受け取る。 時間は残り5秒───── ドリブルすることも無くその位置から間を置かずシュートを放った。 3、2、1… ピ────────!!! 長い笛の音と共にゴールへと吸い込まれるボール。 全員が審判へと視線を移すと彼は右手を勢いよく下げた。 「ブザー…ビート…」 そんな安堂の呟きの後黎学に3点が加算され、ワァッと会場内から歓声が響き渡る。 俺は気が抜けたかのようにその場に座り込むとメンバーが一斉にこちらへとやって来た。 「ナイス、八重!」 「流石空先輩!やるー!」 バシバシと俺の背中を叩くメンバー達。俺は立つ事もままならない為その場で抵抗も出来ずにそんな洗礼を受けていた。 「痛いって────…!」 黎明の横断幕が下がる客席へと視線を向けると七瀬先輩に支えられながら手摺りに掴まって立っている李里先輩の姿。 目を擦るような仕種から泣いていたんだろうと想像でき、ふと笑みが溢れた。ゆっくりと新谷さん支えられながら立ち上がり、李里先輩に向かって右手の拳を出すと先輩も右手の拳を此方へ向かって突き出す。 周りからの歓声や拍手に後押しされつつコートのセンターラインに立ち一礼。目の前に立っていた俺同等にフラフラしている安堂と暫し睨み合いが続くものの、握手を求めるかのように片手を差し出せばがっちりと握り返されるその手に自然と口許に笑みが浮かんだ。 「次は負けねぇからなー!!!」 そんな捨て台詞と共に去っていく安堂。実に安堂らしいと言うか何と言うか… 「なんか全てがアホらしくなってくる…」 そんな俺の独り言は空を舞う。段々と終わりが近付く夏大……最後に笑うはどこの高校か─────。
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